「アフタヌーン」08年7月号

月刊 アフタヌーン 2008年 07月号 [雑誌]

月刊 アフタヌーン 2008年 07月号 [雑誌]

木尾士目ぢごぷり」地獄一丁目・地獄二丁目

 新連載で2話掲載。前号の予告でタイトルを見たときはファンタジー要素とか入った萌え系作品なのかしら、と思っていたのですが、真っ当な子育て漫画でありました。
 生まれたばかりの赤ちゃんを自宅へ連れて帰った双子の姉妹。お母さんの姉と、なぜかゴスロリ衣装の妹。まだ二十歳前なのにきっちり「お母さん」になっている姉と、まだわたわたしている妹の対比が面白い。不細工な赤ちゃん、下の世話、大変なお母さんの身体などなど、子育て描写は奇を衒うことなく真面目に描かれております。
 一年前までは高校生だったという二人、父親が登場していない辺りが今後の話でどう語られていきますかね。

幸村誠ヴィンランド・サガ」第43話:王子生還

 スヴェン王のもとにトルケル・アシェラッドらを連れて帰還したクヌート。権力を握るために策を巡らすクヌート王子、そしてスヴェン王の方もまた――。
 前回からそうですが、前のお坊ちゃんっぷりが嘘のようにすっかり大胆さと狡猾さ、冷酷さをみにつけ指導者としての風格を漂わせる王子。神すら敵対者に定めてしまっております。人が変わった、とかそういうレベルではない覚醒っぷり。このクヌートなら史実通り今後の勢力拡大もなしとげるだろうなあ、という風格。

今井哲也ハックス!」cut.1:ひみつのへや

 四季大賞受賞差の新連載。新入生歓迎会で見た数十秒のアニメに魅せられてアニ研を訪れた少女 みよし。アニ研を訪ねたものの、そのアニメは十年以上前に作られたもので作者不明。じゃあアニメ作りましょう! と飛躍したことを言い出すみよし。
 ちょっと他人と思考や行動のテンポが違う主人公 みよしが愉快でもありかわいらしくもあり。「なんかすごいもの」に感動した、というその興奮でぱたぱたしちゃっております。周囲のキャラも佇まいやちょっとした仕草・セリフで存在感があっていいなあ。このあとの展開に期待しております。

篠房六郎百舌谷さん逆上する」第5話:百舌谷さん噴出する

 「通りすがりのただのドMさ」に大笑い。平気な顔して大馬鹿なことをやってくれるしのふー先生はやはりステキであります。
 思春期直前で異性を前に混乱する男子連中と、もう異性として男子を見ている女子連中。このわずかな、しかし深い溝が事態を大きく紛糾させております。百舌谷さんという一人の女の子を前に、正と負というか、ノーマルとアブノーマルというか、とにかく正反対の位置で性の目覚め前の足踏みをする竜田君と樺島君。ああ……。

市川春子ヴァイオライト」(読み切り)

 飛行機の空中分解から生き残った記憶をなくした未来と、帯電体質のすみれの二人の少年の物語。不思議な雰囲気を漂わせるすみれの正体と、飛行機事故の原因は――。
 四季賞小冊子掲載作の時もそうでしたが、柔らかく儚い線と、透明感のある哀しみを湛えた物語がマッチしていてやっぱり魅力的です。でも雰囲気的に「アフタヌーン」より「エロティクスF」辺りの方が似合っていそうな気も。

杉基イクラ「もえタイ」Episode1:ボクササイズは健康美

 妹に近づくのを嫌がられるくらいに忌み嫌われてボクササイズを強制されたおデブで冴えない少年のお話。ボクササイズという言葉から結構ライトなものかしら、と思っていたら、自身の無い少年に「がんばる」ことを志させる硬派なストーリー。
 「ボクシング」ではなく「ボクササイズ」でどう物語を紡ぐのか興味あります。

都留泰作ナチュン」第25話:賢者の石

 せっかく出来た子供までとられて、でもやっと助かったと思ったらやっぱり非道いことされるテルナリ。しかしここでテルナリが博士のビデオを見てひらめいた事が少しだけ判明しました。まだまだ広がりと謎を抱えた物語ですがそれぞれが上手く切り取られているので混乱しない構成は流石であります。

熊倉隆敏もっけ」#44:アクガレ

 魂の抜け癖が付いてしまった瑞生のお話。それを楽しむ余裕まである瑞生ですがなかなか楽しんでいて良い状況ばかりでもなく。そんな魂が抜け出た状態で久々に静流と会えたのでありました。ちょっと色々なことがあって大変な静流に元気を挙げられた瑞生。姉妹の絆ですなあ。


 既存作家や新人作家の新連載が次々と始まってまた新鮮な感じになってきた「アフタヌーン」。こういう新しい作品が始まる時期の雑誌はとても楽しみです。今月は四季賞ポータブルの小冊子もついて新しいものいっぱい読めて満足です。こっちの感想はまた時間があれば別途。