タイム涼介『アベックパンチ』2巻

アベックパンチ 2巻 (BEAM COMIX)

アベックパンチ 2巻 (BEAM COMIX)

 自分たちを倒した男女が「アベック」という競技のチャンピオンだと知り、その二人をぶっ倒すために自分たちも「アベック」に挑むことにしたヒラマサと、彼をサポートするイサキ。しかし、デリカシーの欠片すらないヒラマサにはパートナーになるような女性の存在はなく、そもそも女の何たるかすら分からない。そんな二人の前にジムの会長が連れてきたのはヒラマサよりもでかい外人の女・コルビーナ。女が全く分からない男と、言葉すら分からない女。二人が手を取って進むアベックの道は果たしてどうなる!?

 社会の最底辺に生きる若い男二人が「取りあえずぶちのめす」という目標として定めたアベックのチャンピオン。「アベック」とは男女が対になって行う格闘技であり、その目標に至るためには女性の存在が不可欠でありながら、しかし二人の生き方は徹底的に女性とは無縁なもの。
 パートナーとして宛がわれたコルビーナをヒラマサが気に入ったのも、それは「チャンピオンをぶちのめす戦力になりそうだ」というだけのものであり、最初は愛情がどうの、という話では全くありません。
 言葉による意志の疎通ができないまま、衝突と無茶を重ねるうち、徐々にパートナーとして信頼を築いていくヒラマサとコルビーナ。この時のヒラマサがもう極限にバカで不器用なのですけれども、それだけに純粋なのです。端から見たら本当に滑稽な程ですが、どうしようもなく眩しい。
 女なんて道具以下と思っていたはずが「初恋」に目覚めて浮かれポンチとなり、やがて相手を理解して「俺は全部お前のためだ」と宣言するまで。そこに至るまでに揺れ動く不器用で純粋なヒラマサの男心描写の精緻なこと!

 そんなヒラマサを傍らで眩しげに見つめるイサキの思いを綴った言葉がまた最高に沁みます。傷だらけで埃まみれの青春を過ごす彼が大切な者を見つけた友人に向ける視線と思いは、どこか世を拗ねたような、でも希望を追い求める力に満ちた詩のようであります。

 互いにかけがえのないパートナーを得てプロテストに合格したヒラマサとコルビーナ。アベック制覇に乗りだし、堅く絆を結んだ二人の前に、しかし、大きな嵐の予感が。一体どうなってしまうのでしょうか。
 今、もっとも目が離せない熱い作品、イチオシです。