坂本六有/ふくしま政美『女犯坊』1巻

女犯坊 1 (1) (マンサンコミックス)

女犯坊 1 (1) (マンサンコミックス)

 恨み辛みを持った女達の百八つの煩悩により、「仏陀異(ぶったい)X」としてあの竜水和尚が現代の新宿に甦った! 時代を超えた怪人竜水が欲望渦巻く腐った街に破壊と救済を与える!

 というわけで、新装版や再録ではなく、完全新作として平成の世に復活した『女犯坊』。あの竜水和尚が新宿を舞台に大活躍。生臭坊主を成敗し、毒婦を昇天させ、その背後にいたヤクザを叩き潰し、ついには政治の世界まで。時を超えて復活しても自慢の肉体とイチモツを駆使して濃ゆく暴れ回っております。
 相変わらず女を犯しまくっておりますが、その描写はエロスというか、ただただ「凄まじい」という言葉に尽きます。竜水の異形の肉体と過剰な描写はエロよりも凄すぎて寧ろ笑いに転化しております。

 現代に甦った竜水和尚は女も抱きまくるし欲望も人一倍だし、無茶苦茶をするのではありますが、昔に比べて人間が丸くなったような。無茶をしつつも悪人の済度をしたり、世直しの方向で動いておりますし。
 以前の「怒根鉄槌編」「妖根魔陰編」などで見せたピカレスクと言うには少々度を超した己の野心に忠実な姿は怪人の姿は影を潜め、案外常識的な人の情を見せたりしております。

 「仏陀異X」という言葉や、「仏を食らえ」という台詞回し、相変わらず濃い竜水の顔と肉体、過激でぶっ飛んだ交合シーンなどと面白い部分は多いのですけれども、やはり昔の無茶苦茶さ加減、ドロドロの怨念と情念と欲望の渦巻くグロテスクな世界に比べると大人しい感じは否めません。
 いや、それでもやっぱり相当に無茶苦茶で凄まじいのですが、あまりにも昔の『女犯坊』が凄すぎるのでどうしてもそれが基準になってしまうというか。

 ともあれ、あの怪作が現代に甦った、という意味だけでも一見の価値はある作品だと思います。還暦を迎えてなおこんな作品をものす事ができるふくしま先生はやあり凄まじいなあ、と。