西川魯介『あぶない! 図書委員長!』

あぶない!図書委員長! (ジェッツコミックス)

あぶない!図書委員長! (ジェッツコミックス)

 西川魯介作品にはどれもこれもメガネ女子の魅力、メガネへのフェティシズムが充ち満ちておりまして、本作もそれに漏れずステキにメガネ濃度が高い話が収められております。
 本作の収録は2作品。「ヤングアニマルアイランド」に連載された表題作と、今は亡き「エース桃組」「エース特濃」に掲載された「dioptrisch!」。

 両作ともに理想的なメガネのお姉様をめぐって、その彼女が好きな者と、メガネ好きな人たちが学内で騒ぎ立てるお話であります。
 メガネ女子に対してフェチっこい情熱を抱く奇態なボンクラたち。亀卜ならぬ「眼鏡卜」で決めた女の子に白子をぶっかける事を目的とする「シャケの会」、乙女同士の糖蜜遊戯に耽る校内秘密結社「薔薇の穴」、委員王なるリーダーのもと委員長による全校支配をたくらむ「委員長委員会」等々――異様で頓狂な人たちばかりですが、その言動は大変にユーモラスであります。

 そんな風変わりにも程がある人たちに囲まれて、ユニークかつ異様なイベントばかりが起る話でありますが、全体の騒がしさに比べて作品全体のトーンは静かな感じがするのが不思議。
 絵柄による部分も大きいのでしょうが、ひたすらに騒がしくかき乱す上記の外野連中に対して、ヒロインであるメガネ女子はいっかな動じず、そノリに流されないでいること、そしてヒロインを恋愛対象に見るものは外野にかき乱されても基本的にヒロインの方を向いている常識人だからというのがあるからでしょうか。周囲はぐるんぐるん回っていても、中心に近づく程凪いでいるという構造が、脇役の騒がしさの割に全体としては静かな印象を与えているような気がします。あとは基本的に登場人物がみな文化系ですし。

 そんなわけでメガネ女子(「メガネっ子」というより「メガネ女子」と言った方がやはりこの作品の場合しっくり来ます)と、学園世界のユニークな魅力溢れる一作。実に味のある作品世界が展開されております。好きだなあ、とても。