遠藤達哉『TISTA』1巻

TISTA 1 (ジャンプコミックス)

TISTA 1 (ジャンプコミックス)

 「シスターミリティア」と呼ばれる正体不明の凄腕暗殺者。ニューヨークの死神とも呼ばれ、多くの「悪人」殺し続けるその暗殺者の正体は、まだあどけなさを残す少女 ティスタ・ロウン。重い十字架と暗い過去を背負って引き金を引き続ける少女の進む道や如何に。「ジャンプSQ」連載中。
 少女で暗殺者、しかも教会所属というキャッチーな取り合わせだけを見ると「またか」なんて思ってしまうかもしれませんが、それだけで侮るなかれ、重めの設定を丁寧な話で織り上げたかなり読み応えのある作品となっております。
 教会の指令によって次々と暗殺の仕事を完璧にこなすティスタですが、表の世界では一人の学生として暮らしております。そんな中で画家志望の青年アーティとの出会いが彼女の仕事に波紋を投げかけます。
 重く暗くただひたすら無機質で完璧に仕事をこなしていたティスタですが、アーティーとの出会いで一瞬垣間見た光の世界が彼女に喜びを与えたのと同時に自らの闇を強く意識させることに。それによってずっと完璧だった仕事にわずかな綻びが生まれます。

 そんな「ティスタ=シスターミリティア」という苦悩を抱える中心に向かって、消えたティスタを追って一人の人間として彼女を追いかけるアーティーと、残されたわずかな痕跡を辿り秩序を乱す暗殺者を追いかける警察という二方面からの追跡劇。背負った十字架の重さに壊れつつあるティスタが残す手がかりを追って二つの追跡者たちが徐々に近づいていく様子は緊張感を湛えております。
 そしてティスタが抱える過去。照準器のようにターゲットを捉える彼女の「目」が持っている秘密とそれにまつわる彼女の過去はなかなかに重く、物語をビシっと引き締めております。

 追跡者達は果たしてティスタにたどり着くことができるのか。それはティスタが壊れる前に間に合うのか、仮に間に合ったところでどうなるのか。ティスタを追いつづける物語は不安な予感と緊張感と謎を孕み、非常に先が気になります。