「コミックビーム」08年7月号
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2008/06/12
- メディア: 雑誌
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しりあがり寿「そこはいきどまりだよ。」第一話:勝利は我らの手に
明るく楽しげに希望や夢といった明るい事を語り合う人たち。そこにかけられた「でもその先は行き止まりだよ」の一言。そんな象徴的なイメージから始まった物語。そんな希望と現実の間で翻弄される人々の人生の一幕を描く、という感じの話になるのでしょうか。第一話を読んだ限りではそんな印象。小さな幸せ・希望を大切にする人とそれが無になった静かな哀しみが印象的でした。
タイム涼介「アベックパンチ」第18話:伝言。
コルビーナが居なくなって悲嘆に暮れるヒラマサと、物思いに沈むイサキ。どうにも出来ないイサキだが、チャンピオンが彼に言った言葉が再び希望を繋ぐ。正直、チャンピオンのヒラマサ評は意外でありましたが、それだけに効果的に読者の心を揺り動かしてきます。くすんだ青春にもう一度火が付く瞬間が静かに熱く、感動的であります。
不器用に哀しさと怒りが込められた詩情溢れるイサキのモノローグも素晴らしい。
入江亜季「群青学舎」第三十三話:スパイ・アンド・スパイ
おお、これは異色作! 列車の中でハードボイルドに会話を交わすニヒルなスパイ二人。――しかしその風体はまるで柳原良平のイラストキャラのような寸詰まり。彼等が機密文書を巡って戦いを繰り広げるのですが――台詞も話もシリアス、なのに二人の風体のせいで何ともユーモラスなお話に。こういう作品も描けるとは実に作風の幅の広いことであるなあ!
そして、販売員のお姉さんはやはり色っぽいのでありました。
新谷明弘『チェーンシティ』
ギアを回すことで生み出す「チェーン」という単位がお金のような役割を果たしている世界。ぐるぐると自分の足でこいでチェーン稼いで上の世界を目指す主人公ですが――
現実を風刺しているような、そうでもないような不思議な味わいの世界。久々の読み切りですが、相変わらず独特の世界を見せてもらって嬉しいです。