ひらりん『のろい屋しまい』

のろい屋しまい (リュウコミックススペシャル)

のろい屋しまい (リュウコミックススペシャル)

 魔法が存在する世界で呪ったり呪われたりといったトラブルを解決する「呪い屋」。この「呪い屋」を営むヨヨとネネという魔法使いの姉妹と、彼女たちのもとを訪れる人々の日々の出来事やトラブル、その他諸々を描いたお話。

 お姉さんのヨヨは魔力は強大な魔力を持つのだけれど、訳あって子供のまま。妹のネネは魔力は劣るけれどしっかりした女性。このデコボコながら仲睦まじい二人と、奇妙な来訪者達のやりとり、そして傍迷惑な解決が愉快なファンタジックコメディであります。

 何より目を惹くのは細密に描き込まれた絵。人物はもとより背景や小道具の細部に至るまできっちり描き込まれた画はそれだけで大変に素敵です。それが一枚画として綺麗、ではなくて漫画的な動きのある絵作りがされているのはとても魅力的であります。

 魔法の存在するファンタジーの世界ということで、その世界や歴史、魔法についての大きな設定が物語の背後でなされておりますが、描かれているのはヨヨとネネの二人と呪い屋周辺で起きるスケールの小さなエピソード中心。でもそれらの細かい設定はきっちり物語に反映されていて、読んでいけば物語世界の空気がきちんと掴める巧さをを感じます。
 ただ絵も含めて情報量が多いので丹念に読まないと細かい情報は見失うかもしれませんが、そこら辺が抜け落ちても、あまり気にせず愉快な姉妹と奇妙な住人達のやりとりだけで楽しめます。

 この1冊のみで完結しているお話ですがもちっとこの世界の話を楽しみたいなあ、そんな魅力的な作品世界と絵を提供してくれております。
 ちょっと表紙から中身の魅力が伝わりづらい感じがするので、気になった人は是非中身を見てみて、もし「絵」が気に入ったのなら損はしないと思うのです。