おりもとみまな『メイドいんジャパン』1巻

メイドいんジャパン 1 (チャンピオンREDコミックス)

メイドいんジャパン 1 (チャンピオンREDコミックス)

 男なのに「メイド女子校」に入学させられ、メイドとしての修練を積む井上成美(しげよし)。実習に派遣された先に待っていたのはメイド嫌いのお嬢様・宇垣まとめ。
 男であることを隠してまとめお嬢様にご奉仕する成美。果たして彼は立派なメイドになることができるのでありましょうか。

 メイド嫌いのお嬢様の頑なな心を少しずつ溶かすメイドの献身とおもてなしの心。困難に耐えて努力を続けるメイドにやがてお嬢様は淡い恋心にも似た感情を抱くようになり――
 筋立ては大変にまともであり、美しくさえあります。そしてメイドです。百合です。キャッチーです。

 しかし。

 メイドが女装少年であるというこの根幹の設定が全てを大きく狂わせているのです。普通にやっていれば美しくたおやかな物語になるはずなのに、根っこがひっくり返っているため全てがギャグと狂気のネタとして昇華しているといういう大笑必至の作品となっております。真面目に前を向いた物語のはずなのに全体としては明後日の方向へと滑落していくのです。
 設計図は整然としているのに、それを組み立てる全てのパーツが狂っているため、完成品は常軌を逸した怪物となってしまった、そんな感じのとんでもない作品であります。

 チンだのマンだの裸だの、過激で過剰な描写と台詞は、もうエロから遠く離れて、目眩のするようなバカらしさと凄みに満ちております。
 狂っているのに美しい、美しいのに狂っている――これが成り立ってしまってしまう奇跡。

 癖のある作品でありましょう。ついて行けないと感じる人もいることでしょう。引いちゃう人だって多いでしょう。万人にはお勧めできないかもしれません。
 だがしかし、それでも私はこの作品は大傑作だと思うのです。