小山宙哉『宇宙兄弟』2巻

宇宙兄弟(2) (モーニング KC)

宇宙兄弟(2) (モーニング KC)

 いつの間にか努力を重ねた弟は先に約束を果たした。自分も約束は忘れていない。昔は弟よりも前を歩いていた。しかし、今は――そんな忸怩たる思いと嫉妬、様々な思いから諦めの言葉を口にした六太。
 そんな兄に対し、強い言葉でその弱気を責める日々人。
 しかし、そこにあるのは兄なら必ず約束を果たしてくれるはずだという確信であり、兄弟の強い絆に基づく信頼であります。
 幼い日に自分を導いてくれた兄の本当の強さを露ほども疑っていない日々人と、その期待と今の自分とのギャップに悩む六太の描写は実に読ませます。

 お調子者で一見頼るに足らない風の六太ですが、日々人の信頼は元より、六太と日々人の子供の頃を知る試験官が彼のために奔走するなど、本人は肯定できなくなってしまっておりますが芯の部分の強さを持っております。そのお調子者というのは、物語を盛り上げる魅力的なパーソナリティでありますが、ある程度は、人生の過程でいつの間にか身につけてしまった自己韜晦の仮面なのかもしれません。

 宇宙を目指して不格好ながらも一歩一歩高みに近づいて行く六太。障害はまだまだたくさんありますし、本人も色々と複雑な思いを抱えております。ただ幼い頃の約束がそれらの困難を全て乗り越える原動力であり、子供のころの純粋な想いによってなされたその約束が、色々と疲れや汚れといったものが溜まってしまった今の六太を導くというのは実に清涼感と力強さがあります。