宮本福助『この度は御愁傷様です』
- 作者: 宮本福助
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/07/25
- メディア: コミック
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亡くなった父親の遺言は「遺産配分はダーツで決めろ」。そんな遺産配分を始めとして、破天荒きわまりない人生を送ってきた父親が、死後になって子供達3人(中年)&孫にもたらすトラブルの数々を描いたコメディ。
亡くなるまで子供達にも一体何をやっていた人間なのか、どういう人間なのか分からない不思議な人生を送っていた父親の坂上徳造(享年78歳)。
その死をきっかけに兄妹3人が集まってようやく分かり始めた父親の人生は、愛人は居るわ、隠し子も居るわ、不穏な仕事をいくつもやっているわ――ととにかく奔放で破天荒なもの。
そんな今は亡き父親の生前の仕事や交友関係といった諸々が残された子供達の人生をぐるぐると引っかき回すのでありました。
「父親の死」という人生の大きな一区切りが付いた後に訪れるのは哀しみでも静寂でもなく、おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎ。遺産や土地の相続など人間の欲が絡んで事態は紛糾しますが、徳造さんの破天荒すぎる生き様や、友人の老人連中のふてぶてしくも明るい振る舞いによって陰惨さは全くない、カラリとしたドタバタ劇に仕上げられております。
あまりにも好き勝手をやりすぎて周囲を引っかき回しながらも愛されている父親。現実のしがらみに囚われがちな子供達に彼が残した「楽しめよ」の言葉は、半ば無理矢理に、しかし確実に残された者達に伝えられました。
笑わせて、でも締めるところはさり気なくしっかり締める構成は流石であります。
『拝み屋横丁顛末記』同様、この作品でもおっさん達が実に良い味を出しておりまして、少年の心を忘れないいい年こいた大人達が繰り広げるスケールのちっちゃいドラマが滋味溢れる笑いを提供。いやあ、こういう風に年を取れたら良かろうな、と思ってしまいます。