もりやまつる『GOLD DASH』3巻

GOLD DASH(3) (イブニングKC)

GOLD DASH(3) (イブニングKC)

 スポンサーをつけずに、昼間は鳶職と練習、夜間はキャバ嬢という日々を送りながら監督の大鳥とともに北京オリンピック女子マラソン出場を目指す蘭。
 金銭の誘惑に負けず、情に厚く義理を重んじる蘭が、ポンポンと吐き出される大阪弁と相俟って女ですけど実に男らしい。
 今までずっと嫌なライバルとして描かれてきた加納愛も、蘭との変則的な勝負の末に辛い過去とスポーツマンシップを見せたことにより尊敬すべき好敵手としての地位向上を果たしました。

 キャバ嬢+マラソン選手という異色の取り合わせ、しかも濃いぃ絵柄でイロモノ的な見方をされがちな作品ですが、克己の精神、ライバルとの爽やかな交歓などなど、スポーツものの基本はしっかりと押さえております。そこをしっかり押さえた上で、濃ゆい絵で濃ゆい味付けをされたキャラ達が異色の設定で真面目に頑張っているのでどうしたって笑ってしまうという。
 キャバ嬢を続けながらオリンピックを目指すなんてあり得ない、と一蹴してしまうところですが、そこら辺を笑って「アリだ」としてしまえる大いなる愛嬌と力強さがあります。

 スポーツ+人情+コテコテのクドさでなかなか類を見ない作品。北京五輪開催の直前ですし、是非もっと多くの人に手に取っていただきたいところです。そして蘭の男らしさに惚れ、大鳥監督やオヤジさんを始めとしたおっさん連中のキモかわいらしさに笑って欲しいところであります。


  • 既刊感想

1巻,2巻