シギサワカヤ『溺れるようにできている。』

 シギサワ先生の作品を昨日に引き続き。昨日紹介しました『ファムファタル』は男性視点の物語ですが、こちらは女性視点の物語。

 年上の幼なじみに告白して付き合うことになった佳織。社会人の彼と微妙に遠距離な恋愛の中で揺れる心と、彼女の人間としての成長を描きます。

 シギサワ作品の中では結構珍しい初心い、というかどんくさいヒロインの佳織。気ぃ遣いで引っ込み思案な彼女は「大人な彼」の存在に気後れを感じながらも、ことある毎に彼への想いを再確認し、一層その恋にはまっていくことに。

 恋愛の中での焦燥や不安が強く描かれていますが、今までの作品よりかなりコメディ的な要素が強く感じられます。美味しいモノ好きの彼氏に引っ張り回されて嫌じゃないんだけれどたらふく食べさせられてしまう佳織は実に微笑ましい。色々気になるお年頃ですのにね。
 そしていつもあたふたしている佳織を微妙にいじめる様がまた微笑ましい。お腹のお肉をぷよぷよと摘んだり。

 恋愛の中で、彼との距離を少しでも縮めようとする努力や、人の想いというものにより真摯に向き合った結果、いつの間にやら成長していた佳織。大人の男、あこがれの、と思っていた彼氏の新しい一面が見えるようになり、また二人の関係は新しいステップに進んでいくのでありましょう。

 微妙に互いの話を聞いていない佳織と彼氏の会話、彼氏の微妙なSっぷりと佳織の動転ぶり等々、ユーモラスな描写を多く含む本作は、ラストもやっぱりちょっと微笑ましいものとなっております。基本は恋愛に絡むあれやこれやを湿度高めに描いておりますが、これらのお陰で何だかんだで全体的には明るい印象。
 結構シギサワ先生の作品の中では異色作、なのかもしれません。