横尾公敏『妄想戦記 ロボット残党兵』1巻

ロボット残党兵 (1) (リュウコミックス)

ロボット残党兵 (1) (リュウコミックス)

 機械化人間が兵器として導入されたという設定のもと、志願して日本の機械化人間「日の丸人」となった男・三船を主人公に、続々とロボット兵を戦線に投入する各国間の戦、そして人と兵器との狭間にある男達の戦いを描く架空第二次大戦物。

 激化する戦争の最前線で多大な戦果を上げる機械化人間達。日本に続いて続々と各国も戦線に機械化人間達を投入し、世界はロボット兵器の世の中を迎える。
 そんな時代の中、病魔に打ち勝つため、そして愛する家族を守るために、自らが研究していた機械化人間になることを選んだ三船。人間であることを辞め「兵器」として生きる事を選んだ彼は、兵器としての眼で、また同時に残された人間の感覚でその戦場を見つめます。
 人外の力がもたらす圧倒的な戦果に対して、人間の部分がふと漏らす短い言葉。これが静かに、しかし重く残ります。

 そして、彼等機械化人間の運用を巡って様々に交錯する政治・戦争の舞台裏。そこに蠢く得体の知れない人間達の野心。
 もはや止めようも無く進んでいく戦争の時代は、多くの人々の野心と人間の心を抱えたまま兵器となった機械化人間達を飲み込んでひたすら驀進していきます。

 と、ここまで重苦しそうな事を書いてきましたが、そればっかりではなく、寧ろ各国の奇人指揮官や技術者のブッ飛びっぷり、各国の機械化人間を始めとした異形の兵器が激しくぶつかり合う戦闘シーン、そして人間以上に人間くさいユニークな言動を見せる機械化人間達と、芯の部分に重めのテーマを持ちつつも、ケレン味溢れるエンターテイメントとして描かれております。

 そして油臭さを感じさせるような無骨で力強い画が、迫力とどこか荒涼とした時代の空気を描きだしていて、またたまらなく格好いい。大変にお勧めの一作ですので、是非読んでいただきたい。

 昨日お勧めしました『ねこむすめ道草日記』と云い、この『ロボット残党兵』と云い、龍神賞はいい新人をどんどん出してきますなあ。