「good! アフタヌーン」初号

good (グッド) ! アフタヌーン 2008年 12月号 [雑誌]

good (グッド) ! アフタヌーン 2008年 12月号 [雑誌]

 アフタヌーン新増刊。増刊だから本誌より尖った作品が多いのかな、と思っていたのですが、結構ベテラン勢がその作風を発揮した作品が多くて、寧ろ新人・新作をこのごろ意欲的に投入している本誌よりも保守的な印象も。
 個人的に特に好きだったり気になったり単行本が出たら買うなあ、というのは以下の作品。

石川雅之純潔のマリア

 キリスト教がその土地の土着の信仰を塗りつぶして版図を拡大した後の時代、「魔女」と位置づけられたまつろわぬ者達の反抗の物語――という『カタリベ』や『人斬り龍馬』などで見せた歴史の狭間に飲み込まれた者達を描く作品かと思いきや、おぼこな魔女の恋愛戸惑い勘違いコメディだったという。
 いや勿論前者的な要素も多分に孕んでいますし、そっち方面の展開もしそうですが、取りあえず第壱話はそれを装ってコメディとしてはっちゃけたのにひたすら「やられた!」感があって非常に楽しゅうございました。

太田モアレ鉄風

 何をやっても上手く出来てしまう故に常に退屈を感じる天才肌の少女と、真面目に前向きに頑張る格闘少女。二人の出会いから始まる物語。
 天才少女の性格の悪さというか、歪な人間観察の視線と、格闘少女の真っ直ぐさの対比。これが二人のビジュアル的な対比と併せて描かれていて実に鮮やか。何でもできるくせに「充実している人間は許さない」とか決意してしまうヒロインの精神の歪さにぞくぞくします。彼女のキャラクターが今後どう転がっていくか楽しみ。

虎哉孝征「カラミティヘッド」

 近未来、独立を果たした北アイルランドという舞台設定で、キリスト教以前の土着宗教の古き神々に繋がりそうな事件。波乱含みの舞台設定と云い、物語の道具立てと云い、実に心くすぐるものがあります。事件を通じて現在の人々と社会を中心に描くか、古代の影を色濃く描くか、どっちを行っても面白くなりそう。

沙村広明ハルシオンランチ」

 感覚としては『おひっこし』辺りに近い現代劇ギャグ。アッパーでザクザクと思い切りの良いテンポと色々過剰な登場人物達が愉快。
人生転落中の男が出会った奇妙な少女、彼女は大変に「喰べちゃう」人で、それに巻き込まれてしまう周囲の人たち。いやー、ぶっ飛んでますな。ディティールはすごく「今」を移しているのに、ごりごりと変な話に滑落していく様とそれを受け入れざるを得ない主人公達に大笑い。「食べたもの混ざっちゃった」って。