今井哲也『ハックス!』1巻

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

 
 高校の新入生歓迎イベントで見たアニメに感動し、アニメを作りたい! というスイッチが入ってしまった女の子・阿佐実みよし。ちょっと変わった彼女の、周囲を巻き込んでのアニメ制作奮闘記漫画。

 みよしが門を叩いたアニ研は、人員なしやる気なしの有名無実状態。しかし、開かずの間状態になっていた部室にはなぜかアニメ制作の充実した環境が眠っていて、みよしが感動したアニメも過去にそこで作られた模様。
 無気力な先輩、アニメフィルムの制作者を追う少年・児島などを巻き込んで膨らんでいくみよしのアニメ作りへのワクワクと、アニ研の過去の謎といった2本柱が物語を牽引します。

 ノウハウも一切無いのに「アニメすごかった!」から「アニメ作りましょう!」に思考と行動が飛躍してしまう、人とはちょっとチャンネルが違う感じのみよし。彼女の言動はいつも突拍子も無くて、驚かされるやら面白いやら。かなり異色で新感覚なヒロインであります。ちょっとアホの子なのかしら、とも見えてしまいますが、それは純真さと熱意ゆえ。普段はヘンなんですけれども、所々で発揮される真っ直ぐさとかピュアな喜びの表情にグッと来ます。

 そんな彼女ですが、目茶苦茶に手が早く、パラパラ漫画を次々に作ってきます。最初は「何だこりゃ
」という風に見ていた周囲の人間達も、みよしにつり込まれるようにアニメ作りに熱が入るように。
 くるくると空回りしていた歯車が少しずつ周囲と噛み合って行って、徐々に全体を動かしていくようです。

 制作したアニメの発表先が二十世紀日の丸動画、略して「ニ○動」だったりと、「今」を意欲的に取り入れた話作りが興味深いところ。
 ちなみに、彼女達がアップしたアニメは実に斬新な作りで、あんな作品が本当にあったら面白そう。

 みよし達がこれからどんな作品作りをしていくのか、そしてアニ研に残されたフィルムは誰がどうやって作ったのか。この先の展開にわくわくします。


 アニメ作りを題材にした漫画というと同じ『空色動画』がありますが、あちらは泣いたり笑ったり、喜怒哀楽の大きい真っ直ぐな青春モノ、こちらはテクニカルなキャラ配置と物語設定で引き回す印象。
 どちらも仲間と作品を作り上げる楽しさが核にある点は同じですが、味わいはかなり違っております。どちらも大変にお勧め。