坂木原レム『フルイドラット』1巻

フルイドラット (1) (リュウコミックス)

フルイドラット (1) (リュウコミックス)

 フリーライターのサイネンが出会った津軽弁の女性ミズキ。彼女は人間の体液に触れるとネズミに変身してしまうという特殊な体質の持ち主で――。
 共同生活を始めることになったミズキとサイネンは、「ネズミオンナ」を巡って交錯する様々な人間達の思惑に巻き込まれていくことに。

 逃亡した実験体としてミズキを追う研究機関、その彼女を故意に逃がしデータをとり続ける研究者、ネズミオンナの特ダネのために周辺を嗅ぎ回るライター等々、ミズキを追う者達の存在。そして素性を隠してアイドルとして生きる、もう一人の「ネズミオンナ」。
 様々な角度から少しずつ語られていくネズミオンナの秘密。「ネズミに変身する人間」という不思議の背後には、大きな影が蠢いております。

 そんな「ネズミオンナ」の特ダネを追うライターと特ダネ本人という奇妙な関係から始まるの主人公コンビですが、サイネンは功名心と正義感から行動を起こし、ミズキもそれに対して徐々に対して心を開いていき、少しずつ固まっていく絆。
 サイネンにとってそれらの行動は、簡単な正義感や単なる憐憫だけから出たものではなく、志の高かったかつての自分を取り戻すためのものでもある点が、彼を単なる騎士役に留まらない屈折を抱えた人物となっております。

 そして、1巻の後半でネズミ人間「フルイドラット」の恐ろしい秘密が明かされたことで物語は俄然面白くなってきます。「フルイドラット」という存在は果たして人間に何をもたらすのか。まだまだ多くの謎を孕んだ物語に興味は尽きません。今後の展開が非常に気になるお薦めの一作。