アントンシク『ガゴゼ』5巻

ガゴゼ 第5巻 (バーズコミックス)

ガゴゼ 第5巻 (バーズコミックス)

 ガゴゼの過去、有盛の秘密、カシリ様の正体――等々、今までの謎が明らかになり、全てに決着が付く最終巻。
 
 荒ぶる大鬼と彼の心にさざ波と立てる一人の美少女。過去との因縁と絡めて解きほぐされていく謎の数々。王道の道具立てを、しかし力強く描ききる筆力に拍手、の素晴らしい物語でありました。

 有盛達が望んでいたカシリサマの復活にかける思い、その有盛に仕えた十二神将達のそれぞれの思い、ガゴゼ必滅を願う足利義満の思い、そしてガゴゼをかき乱していた本人にも判別不能だった思い、それぞれに形が違うながらも物語を動かしてきた激しい思いですが、どれもこれも裏には哀しみを湛えていたことが物語に切ない余韻を与えます。

 ずっと荒ぶる大鬼としてあり続けたガゴゼ。人間の存在など歯牙にもかけない強大な力を持った「鬼(カミ)」でもあった彼が、その最後の戦いを経てどうなったか。
 荒ぶる物語のラストは全てを飲み込んでただひたすらに静かに。

 いや、本当に良い作品を読ませていただきました。