木々津克久『ヘレンesp』1巻

ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 目が見えず、耳も聞こえず、言葉を話せないという三重苦を背負った少女・ヘレンにに目覚めた不思議な力。
 物語中の言葉を借りれば「住む世界の範囲が広」く、普通の人々が見たり聞いたりできない者達と交流し、働きかけることができるようになったヘレン。
 その隣人達は恐ろしげだったり不吉な姿をしていたりするものの、外見とは裏腹に切なさを秘めていて、ヘレンの素直で美しい心との出会いが切なく優しい物語を紡ぎます。

 ヘレンの友人であり保護者的立場でもある盲導犬のヴィクターのちょっとスレた感じ、騒がしくも優しい叔父さんの思いやりなどなど、味のあるキャラ立ちがまた物語の雰囲気を柔らかなものにしていてまた心地よい読後感。

 巻末おまけ漫画では『フランケン・ふらん』のふらんちゃんとの競演も見られて、それがまたいい話で。

 その身に課せられたハンデを恨まないヘレンの強さと優しさ、それと出会った者達が彼女から受け取るものと、彼等がヘレンに残すもの。そんな物語であります。