久正人『ジャバウォッキー』7巻

ジャバウォッキー(7) <完> (マガジンZKC)

ジャバウォッキー(7) <完> (マガジンZKC)

 恐竜人間達が人間に対して仕掛けた罠と、その罠の鍵となる「永遠の火種」とは一体何か!?

 ああ、最終巻! これで終わりだなんて!
 エジソンが裏の仕事を任せる特殊部隊の名前が「99」(努力とひらめきのアレ)という素晴らしいセンス。
 刀で車をぶった切りまくるフォード社長。
 恐竜人間達が演じ、人間が熱狂した茶番劇。
 そしてサバタとリリーの間にさえあった人間と恐竜の決定的な違い。
 やー、アクションの冴えは勿論のこと、セリフ回しから演出から、とにかく最後までシビれる展開満載でありました。

 人間と恐竜人間達、この物語を盛り上げた数々の役者達に惜しみない拍手を!
 そして願わくは再び恐竜人間と人間達のドラマが始まらんことを!


ツナミノユウ『シュメール星人』1巻

シュメール星人 1 (ヤングジャンプコミックス)

シュメール星人 1 (ヤングジャンプコミックス)

 地球にやってきたシュメール星人達は、最初は話題になったものの、地球より文明レベルが低いことがはんめいして、やがて扱いはほとんど難民並に。そんな彼等の中から一人のシュメール星人が「文明ふれあい大使」として日本で2年間過ごすことに。
 ――早い話が「日本で暮らすのに害が無いかテストケースとして見てやろう」という提案であり、それに選ばれた一人のシュメール星人の悲しくも可笑しい生活の記録。

 とにかく切ないシュメール星人の日常。真面目でいい人なのにちっとも報われない不器用さというか間の悪さというか――現代社会の軋轢の中でもがき、貧乏くじを引き続けるその姿はとても悲しく、しかし大変にユーモラスであります。
 宇宙人なのに小市民的、誰にも「宇宙人」として気にされていない辺りがまた哀愁を漂わせます。
 ああ、なんて面白切ない。

宮原るり『恋愛ラボ』2巻

恋愛ラボ 2 (まんがタイムコミックス)

恋愛ラボ 2 (まんがタイムコミックス)

 いよいよ本格的に恋愛研究を開始することになった生徒会の面々。しかし恋愛への憧れが強ければ強いほど、彼女たちの行動は迷走してしまうのでありました。

 いやー、可愛さと、それ以上にアホ度を増す女の子達がたまりません。ますます息の合ったボケとツッコミを見せるマキとリコを始めとして、恋愛経験だという嘘の引っ込みが付かなくなったリコを弄るサヨ、最強の純真さでその沙依理を押さえ込むスズ、ヘタレツンデレのユイコなど、新たに加わったメンバー達のキャラ立ちも素晴らしい。

 恋愛研究の迷走っぷりには大変笑わせてもらいましたが、恋愛相談の解答をどうやって質問者に伝えるか、というエピソードや、巻末書下ろしのサヨの眼鏡話のように、彼女たち優しさや友情をピリッと描き、締めるところはしっかり締める辺りがまた実に心憎い。
 そんな本当にいい娘たちである、というのが下地としてあって、そのうえでアホなことをやっているというのが何とも言えないほほえましさを醸し出します。

 そして、リコのおさななじみの男の子とその友人が登場してほんのりラブめいてきたり、新聞同好会の女の子が登場して恋愛研究の尻尾を掴まれたりと今後の展開に一波乱ありそうな予感。いやー、どんどん面白くなってきますなあ。


木々津克久『ヘレンesp』1巻

ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ヘレンesp 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 目が見えず、耳も聞こえず、言葉を話せないという三重苦を背負った少女・ヘレンにに目覚めた不思議な力。
 物語中の言葉を借りれば「住む世界の範囲が広」く、普通の人々が見たり聞いたりできない者達と交流し、働きかけることができるようになったヘレン。
 その隣人達は恐ろしげだったり不吉な姿をしていたりするものの、外見とは裏腹に切なさを秘めていて、ヘレンの素直で美しい心との出会いが切なく優しい物語を紡ぎます。

 ヘレンの友人であり保護者的立場でもある盲導犬のヴィクターのちょっとスレた感じ、騒がしくも優しい叔父さんの思いやりなどなど、味のあるキャラ立ちがまた物語の雰囲気を柔らかなものにしていてまた心地よい読後感。

 巻末おまけ漫画では『フランケン・ふらん』のふらんちゃんとの競演も見られて、それがまたいい話で。

 その身に課せられたハンデを恨まないヘレンの強さと優しさ、それと出会った者達が彼女から受け取るものと、彼等がヘレンに残すもの。そんな物語であります。


黒神遊夜/神崎かるな『しなこいっ!』1巻

しなこいっ 1 (CR COMICS)

しなこいっ 1 (CR COMICS)

 ブラ……じゃなかった、大胸筋サポーター……でもなかった、拘束具、アレは一体何なんだ!

 と、かわいいい女の子も、イケメンのお兄さんも、全てじーさんのブラジャーの前に全て持って行かれてしまった感もありますが、この作品は剣道漫画。

 「雲耀」なる必殺剣に因縁がある男と、短剣道の遣い手の少女の出会いから物語が動き出す……と思うのですが、この1巻ではその出会いまでを描き、物語はこれからさてどうなる、といったところ。

 中二テイストを感じさせるキャラの立ちかたとかネーミングセンスから、ファンタジーが強めに入ったバトル系の作品なのかしら、と思った所で例のブラですよ。虚を突かれて唖然としたあと大笑いしてしまいましたよ。

 しかしまあ、何でしょうか、このギャグセンスは。シリアスな中にちょろちょろと滲んで、時に爆発。作品の構成要素とギャグセンスのミスマッチっぷりがちょっと新感覚です。

 アニメ超のかわいらしい女の子とか、とても魅力的なのですが、いやもう、ブラジャーのインパクトが強くて。
 少々大仰ながらもバトル中心の剣道モノとして展開して行きそうですが、(主にギャグのせいで)妙な方向に跳ねて行きそうな油断のならない感じもあって興味を惹かれます。

大場つぐみ/小畑健『バクマン。』1巻

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

 中学生二人、漫画家を志す! というお話ではありますが『まんが道』的な創作を志す若者の青春譚、という感じではなくて漫画業界の今を巧みに切り取った業界モノ、という印象。

 ストーリー作りと作画、それぞれに秀でた少年二人がコンビを組んで漫画家を目指していくわけですが、彼等の原動力は、マイルドに描いてあっても、突き詰めていくと金と名声と女であります。
 当たればデカい漫画で名前を残したい、一番であるジャンプで連載を勝ち取りたい、同年代の強力なライバルに勝ちたい、漫画家になって憧れのあの娘と結婚する――などなど。成功への欲求はこれだけ描き、そして、漫画業界の話や技術的な話題は出しつつも、「何を描くか」「自分は何のために描くのか」という表現者としての葛藤や悩み、といった部分は奇麗に切ってしまっている潔さがこの作品の方向を示しているものではないかと。
 
 基本的に野心に燃える若者達のサクセスストーリーであり、それがたまたま漫画であったわけですが、それが「漫画」でなければならない必然性を支えるディティールの描き方・説得力がとにかく興味深く、そして面白いのであります。
 
 しかし、そんな少年達の野心ばかりではなく、純愛と漫画だけに生きて、そして死んだ叔父さんの意志を継ぐように漫画界を目指し始める辺りのロマンチシズムがまた心憎かったり。

 話の展開的にも漫画業界話的にも目の離せない一作ではないでしょうか。

09年1月購入予定

 えーと、明けましておめでとうございました。
 年末から色々と忙しかったり、そのまま帰省していたりで更新が止まっておりました。
 年末の雑誌とか感想書いていない作品など多々ありますが、まあ、時間があればおいおいと。

 この頃いろいろ考えてしまって更新がしんどくなってきてたりするので、今年はあまり頭を使わずに軽めに更新していけるようにしたいなあ、と。ちょこちょこ変わる部分が出ることと思いますが、まあ、そこはそれ、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 というわけで、多分に備忘録的意味合いも兼ねた購入予定。週末にしか本屋に行けない環境になってしまったので本当にアンテナがすぐ錆び付きますわい。

  • 1/20


 キャラはかわいい話は素敵、どんどん面白くなっている恋愛ラボ2巻がまず楽しみな1冊。
 そしてまさかの単行本化『敗北DNA』。いや、嬉しいんですが単行本化して大丈夫なのかしら、という。(採算的な意味で)

 成年コミックだとF4U『今夜のシコルスキー』田倉まひろ『たくらまかん動物園』に期待。実用というより、妙な味わいのギャグを求める方には大変にお勧め。『たくらまかん〜』は「ばっちゃのねこ」の続き的なあのエピソードが多分収録されていると思うので。

 そして今月一番の注目――万人にお勧めするかどうかはまた別として――は黒咲練導放課後プレイ
 黒髪ロングストレート、黒ストの細身の女の子、目つき悪し、こんな属性に反応する人であれば是非。この属性持ちだけを殺す機械かよ! てな感じで。この淫靡さは尋常ではありません。