鳴子ハナハル『少女マテリアル』

少女マテリアル (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

少女マテリアル (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

 もはや説明不要でありましょうか、著者初の成年マーク付き初単行本。
 02年から04年の初期の作品を中心に収録しておりまして、現在「快楽天」に掲載している明るいエロ中心の作品群とは異なり、暗いエピソード多め、ストーリーテリングに重き置いた話が多いセレクトとなっております。
 いやもう既に余所で真っ当なレビューはたくさん書かれておりますので今更何を付け足すこともないのですけれども、美麗で端正な画と、結構ハードな絡みの描写は流石の一語に尽きます。
 狂おしいまでの「俺のエロスとはこういうものだ!」的な激しいリビドーをぶつけるのではなく、非常に技巧的に詰めたエロなので万人に受け入れられる作品でありましょう。特殊性癖も無いストロングスタイルですのでそういう意味でも万人が安心。
 その分、強烈なエロスに圧倒されるというような感じではありませんが、圧倒的な絵柄の魅力によってそこら辺は十二分以上に補われております。
 話題性においても、作品のクオリティにおいても他の追随を許さない、とにもかくにも圧倒的な存在感を持った一冊であります。

 近年の「快楽天」への掲載状況を考えると、カラー原稿含めてまだまだこの単行本に収録されていなかった話があるので、2作目も早く出ると良いなあ。
 などと思いつつもまた待たされるのだろうなあ、という諦観も。

 個人的には、旧家にまつわる暗い影・蔵という舞台・美少女の三題噺的お約束要素をストレートに、でも淫靡でハードに描いた「蔵」が一番好みであります。ヒロインの造形的にも。